コーチの質問術。 『なぜそうしたの?』がバスケ IQ を伸ばす
「ここはパスだろ!」と決めつけるコーチと、「他の選択肢はあった?」と問うコーチ。
長期的に伸びるのは後者 です。質問の質が選手の自己分析力 = バスケ IQ を決める。具体的な質問術を整理します。
なぜ『答え』を与えるのは逆効果か
答えを与えると選手は 思考停止して指示待ちになる。試合中はコーチの声が届かない場面が多く、選手自身の判断力が試される。
コーチが答えを言い続けると、選手は『コーチが言ったから』を理由化する → 試合本番で迷子になる。
オープン vs クローズドクエスチョン
クローズド: 「あそこでパス出した方が良かったよね?」 → 答え: はい / いいえ
オープン: 「あの場面、どんな選択肢があった?」 → 選手が複数挙げて自己分析
Yes/No で答えられない質問 = オープンクエスチョン。これが思考を引き出す。
5 Whys: 深掘り質問のテクニック
1 つの場面に対し 「なぜ?」を 5 回繰り返す とプレーの本質に到達する。トヨタ生産方式由来の手法でコーチングにも有効。
- →Q1 なぜパスをカットされた? → 受け手が見えていなかった
- →Q2 なぜ受け手が見えなかった? → ボールばかり見ていた
- →Q3 なぜボールに集中していた? → ドリブルに自信がなかった
- →Q4 なぜ自信がなかった? → 左手のドリブル練習が少ない
- →Q5 では明日からの練習で何を変える? → 左手 100 本ドリブル
場面別おすすめ質問集
練習中
- 「今のプレー、自分で 100 点中何点?」
- 「同じ状況がもう 1 回来たら、どうする?」
- 「相手のディフェンスは何が嫌そうだった?」
試合のタイムアウト
- 「今、相手は何を狙ってきてる?」
- 「うちの強みでまだ使えてないものは?」
- 「次の 1 プレー、誰がボール触って何する?」
試合後の振り返り
- 「自分で一番良かったプレーは?」
- 「もう 1 回やり直したい場面は?」
- 「次の試合に向けて、明日の練習で何やる?」
guided discovery: 答えに導く質問
完全自由ではなく コーチが意図する答えに、選手自身がたどり着けるように誘導する。Motor Learning 研究で実効性が示されている指導法。
「ヘルプディフェンス遅いよ」と言わず、「相手のドライブ来た時、君は最初どこ見てる?」 → 選手「ボール...あ、自分のマーク」 → コーチ「ボールとマーク、両方見るには?」
やってはいけない質問
人格を否定する質問は NG。「なぜそんな下手なの?」は質問ではなく攻撃。プレーの選択を問うのは OK、能力を問うのは NG。
- ❌ 「なんでお前はいつもそうなの?」 (人格)
- ❌ 「やる気あるの?」 (態度を疑う)
- ✅ 「あの場面、何を考えてた?」 (思考プロセス)
- ✅ 「次やるとしたら何を変える?」 (改善志向)
練習に組み込むコツ
- 1. 練習の最後 5 分を『振り返り問答』時間にする
- 2. ペアで質問し合う (選手同士でセルフコーチング練習)
- 3. 試合動画を見ながら一時停止して『次どうする?』
- 4. 質問のあと、最低 10 秒は答えを待つ (沈黙に耐える)
出典: 日本コーチング学会 学会誌 (jcoaching.jp/journal/) / Coaching Education Network 教育法資料 (coaching.jp/education/) / John Wooden's Pyramid of Success 関連解説 (wooden.com/pyramid) / Motor Learning and Performance (Schmidt & Wrisberg) — guided discovery 章